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「百花繚乱」展にちなんだ和菓子をいただいてみました!

美術館のカフェやレストランに行くと、展覧会にちなんだメニューを提供されていることがよくありますよね。

山種美術館の「Cafe椿」では、毎回の展覧会にあわせて、出品作品にちなんだオリジナルの和菓子をご用意しているんですよ。

作ってくださるのは青山の老舗菓匠「菊家」。1935(昭和10)年の創業以来、一子相伝で技術を伝えておられます。支店も出されていないので、「菊家」の和菓子をいただける機会は貴重なのです!

この記事では、現在開催中の「百花繚乱―華麗なる花の世界―」展にあわせてお出ししている和菓子5種を取り上げ、試食の感想も交えながらご紹介していきます。

1.王道のこしあん+練り切り―「はすはな」

まずはピンクの彩りとふっくらとしたフォルムが目を引くこちらの和菓子から。銘は「はすはな」です。

はすはな 黒文字付 02

もとになったのは小林古径(こばやしこけい)の《蓮》。4輪の花が、左下のつぼみから順に開花するかのように描き出されています。蓮の清浄な美しさが際立つ作品です。

027 A0007d 小林古径 蓮_C 

[小林古径《蓮》山種美術館蔵]

「はすはな」も古径の作品と同じく静かで気品のあるたたずまい。中にはこしあんが入っています。

はすはな 断面 03

風味豊かで甘さ控えめ、上質な上質なこしあんです。一口いただいただけでも、丁寧に作られているのがよく伝わってきます。

花びらをかたどった練り切りの造形美にもほれぼれしながら、あっというまに完食してしまいました!

2.泰山木のイメージにピッタリ!―「花のかおり」

次も小林古径の作品にちなんだ和菓子です。銘は「花のかおり」

花のかおり 01

こちらは古径《白華小禽》がもとになっています。モティーフは初夏に芳しい香りを放つ泰山木(たいざんぼく)。大ぶりで肉厚の白い花びらや硬い葉の質感が見事に表現されています。

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[小林古径《白華小禽》山種美術館蔵]

「花のかおり」は、外側が葉をイメージしたきんとんで、上には花をかたどった白いあんがのっています。中は黒糖を使った大島あんです。

花のかおり 断面 07

こしあんの軽やかさとは違う、黒糖ならではのしっかりした味わいと、きんとんのボリューム感がマッチしています。

食べごたえのある印象は、泰山木の堂々とした存在感そのもの。作品を鑑賞した後にいただくと、さらに味わい深いと思います!

3.涼やかでモダンな和菓子―「雨あがり」

今度は梅雨の時期にピッタリなこちらの和菓子。銘は「雨あがり」です。

雨あがり 02

もとになったのは山口蓬春(やまぐちほうしゅん)が描いた《梅雨晴》。当館の開館にあたり、創立者の山﨑種二(やまざきたねじ)が蓬春に依頼し、制作されたもので、1966(昭和41)年の竣工記念展に出品されました。雨上がりのやわらかな日ざしのもと、つややかに輝く紫陽花を描いています。

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[山口蓬春《梅雨晴》山種美術館蔵]
©公益財団法人 JR東海生涯学習財団

「雨あがり」もそんな紫陽花のイメージが表現されています。キラキラと輝く宝石のような表面は、寒天を使った錦玉羹(きんぎょくかん)。寒色系の彩りや透明感がとても涼やか。中の白あんも青磁を思わせる絶妙な色合いです。

雨あがり 断面 04

錦玉羹は梅酒風味。白あんと一緒にいただくと、寒天ならではの食感と梅酒の香りがアクセントになり、同じあんを使った生菓子なのに、全くの別物に感じます。

目で見て涼やか、味わってさわやか。今からの時期に最高の和菓子です!

4.優美な姿、華やかな味わい―「百花」

4番目にご紹介するのは、白牡丹をイメージしたこちらの和菓子。古来、牡丹が「百花の王」と称されてきたことにちなみ、「百花」と名付けられました。

百花 黒文字付 02

もとになったのは菱田春草(ひしだしゅんそう)の《白牡丹》。
今回の展覧会には牡丹を特集したコーナーがあり、さまざまな日本画家の作品を展示しています。なかでも《白牡丹》は夢幻的な趣のある作品で、牡丹のたおやかな風姿が魅力です。

049 A0206oa 菱田春草 白牡丹_R 

[菱田春草《白牡丹》山種美術館蔵]

「百花」も楚々として優美な姿形が特徴です。切ってみると、中から浅緑色のあんがお目見えし、ぱっと華やいだ雰囲気に。

百花 断面 08

いただいてみると、緑のあんから柚子の風味が広がって、口の中でも華やぎを感じます。牡丹がつぼみから見事に開花していくように、目の前に出てきたときから食べ終わるまで、牡丹の魅力を満喫できる和菓子です。

5.凝った意匠と意外な風味―「あづまくだり」

最後にご紹介するのは、まるで工芸品のように意匠を凝らした和菓子です。銘は「あづまくだり」。『伊勢物語』で主人公が京の都から関東へと旅する「東下り」にちなんでいます。

あずまくだり 黒文字付 01

もとになっている作品は川端龍子(かわばたりゅうし)の《八ツ橋》です。東下りの途中、主人公が三河国の八橋で沢に咲く杜若(かきつばた)を目にし、「ら衣 つつなれにし ましあれば るばるきぬる びをしぞ思ふ」と「か・き・つ・ば・た」を頭に置いた和歌を詠んだという、有名なエピソードを題材にしています。

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[川端龍子《八ツ橋》山種美術館蔵]

「あづまくだり」もエピソードの設定そのままに、練り切りで沢の水を表現し、上には杜若の花と橋をあしらっています。
白い花は卵白を使った淡雪羹(あわゆきかん)、橋には焼き目のような細工もされていて、多彩なテイストが楽しめます。

あずまくだり 断面 01

外は練り切り、中はこしあんというオーソドックスな構成ですが、いただいてみると、甘酸っぱい味がふわっと口の中に広がって、意外な味わいにびっくり!練り切りに杏が入っているんですね。

目と舌で楽しんでいるうちに、こちらも気づいたら完食。ごちそうさまでした!

あずまくだりと抹茶セット 03

雨あがりと緑茶セット 01

「Cafe椿」では、コーヒー、紅茶はもちろん、和菓子に合う抹茶や緑茶もご用意しています。暑い時期には夏季限定の冷たい抹茶もあります。お好みのお飲物とあわせて、鑑賞後のひとときをごゆっくりお楽しみください。

百花展2021 和菓子集合 03

和菓子はそれぞれ姿も味も違っていて、どれも魅力的なので、1個を選ぶのは大変…という方もいらっしゃるかもしれません。でもご安心を!テイクアウトも2個から承っていますので、お持ち帰りも併用できますよ。

今回ご紹介した和菓子は、「百花繚乱―華麗なる花の世界―」の会期にあわせ、6月27日(日)までご提供しています。この機会にぜひご利用ください。皆様のご来館をお待ちしています。

※「Cafe椿」の営業日・営業時間は美術館に準じます。詳しくは当館のWebサイトをご覧ください。

文:三戸信惠(山種美術館 特任研究員)




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1966(昭和41)年、日本初の日本画専門の美術館として開館。 2009(平成21)年、渋谷区広尾に移転、新美術館としてオープンしました。 創立者・山﨑種二の「美術を通じて社会、特に文化のために貢献する」という理念を受け継ぎ日本画の魅力を発信する美術館です。