オンライン展覧会 【開館55周年記念特別展】 速水御舟と吉田善彦 ―師弟による超絶技巧の競演―
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オンライン展覧会 【開館55周年記念特別展】 速水御舟と吉田善彦 ―師弟による超絶技巧の競演―

オンライン展覧会開催にあたり

山種美術館では2021年9月9日(木)から11月7日(日)まで「【開館55周年記念特別展】速水御舟と吉田善彦 ―師弟による超絶技巧の競演― 」を開催中です。

この時期、外出を控えていらっしゃる方々にも本展の魅力を味わっていただきたいという思いから、このたび、オンライン展覧会を開催します。展覧会場のパネル・キャプションに加え、本展覧会に合わせてピックアップした[師・速水御舟の作品について -吉田善彦のことば-]も収録。吉田善彦のことばとともに読み解く速水御舟の作品は、新鮮な気づきを皆様に感じていただけるのではないでしょうか。一部の作品は部分拡大画像を載せており、細部までお楽しみいただけます。お好きなお時間にゆっくりとご覧ください。ご来館前や後の予習・復習にもおすすめです。

開催概要

・出品作品数:全61点
第1章 速水御舟―日本画の挑戦者― 37点
第2章 吉田善彦―御舟に薫陶を受けた画家― 24点 (美術館における展示数は26点ですが、オンライン展覧会では、うち2点の画像掲載が都合によりありません。)
*こちらのnoteでは、展覧会に出品されている作品の画像や解説などを掲載しています。
*山種美術館館長 山﨑妙子 特別解説「速水御舟作品の魅力」(全11点収録、販売価格500円)はこちらよりご購入ください。
・販売価格:980円 
・オンライン展覧会 会期:記事をご購入いただくとご登録メールアドレスに自動送付され、無期限でご覧いただけます。

冒頭の3点を無料で公開していますが、全てをご覧いただくためには、無料公開の下にある「記事を購入する」をクリックしてご購入ください。


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ごあいさつ

1966(昭和41)年に日本初の日本画専門の美術館として開館した山種美術館は、2021(令和3)年に開館55周年を迎えます。これを記念し、当館のコレクションの「顔」ともいえる日本画家・速水御舟(1894-1935)と、その弟子の吉田善彦(1912-2001)に焦点をあて、彼らが超絶技巧により生み出した作品をご紹介する特別展を開催いたします。
御舟は、横山大観や小林古径らから評価を受け、23歳の若さで日本美術院(院展)同人に推挙されます。「梯子の頂上に登る勇気は貴い、更にそこから降りて来て、再び登り返す勇気を持つ者は更に貴い」という本人の言葉どおり、古典を基礎に次々と新たな作風や技法に挑み、40歳で早世するまで日本画壇に新風を吹き込み続けました。
一方の善彦は、17歳で姻戚関係にあたる御舟に弟子入りし、写生や古画の模写、作画姿勢などを学びます。また、戦中・戦後には、法隆寺金堂壁画の模写事業にも参加しました。これらの経験を通じて、善彦は古画の風化した美しさを追求するようになり、金箔ともみ紙を用いた「吉田様式」と称される独自の絵画世界を作り上げるにいたりました。
本展において、御舟の作品では、近年の調査で西洋の顔料を使っていた事実が判明した《和蘭陀菊図》をはじめ、金砂子を地一面に使う「撒きつぶし」を用いた《名樹散椿》【重要文化財】、本人曰く「二度と出せない」色彩を用いた《炎舞》【重要文化財】など、また善彦の作品では、「吉田様式」を初めて用いた《桂垣》や、この技法を熟達させた《大仏殿春雪》、《春雪妙義》などを展示し、二人の代表作をはじめとする優品をご紹介します。御舟と善彦は、ともに伝統的な技法を土台に精緻で独創的なアレンジを加えて、それぞれ唯一無二の画風を確立した画家です。本展を通じ、御舟と善彦の師弟が追求した超絶技巧の世界をご覧ください。

514速水御舟と吉田善彦展 館内配布リスト0906


第1章 速水御舟―日本画の挑戦者―

速水御舟01(パスポート 1930(昭和5)年)_S

速水御舟 
『新美術館開館記念特別展 速水御舟―日本画への挑戦―』(山種美術館 2009年10月)より画像転載

「絵画修業の道程に於て一番私が恐れることは型が出来ると云うことである」と述べた速水御舟(1894-1935)。約25年という短い画業の中で、次々と新たな画風や技法に挑み続けました。
御舟は14歳の年に歴史画家・松本楓湖に入門し、屋外での写生や、日本・中国の古画を写した粉本の模写を通じて、日本画の基礎を学びました。20歳を迎えた1914(大正3)年には、横山大観らが再興した日本美術院の第1回展に出品し院友に、3年後には同人に推挙されます。
当時の御舟は兄弟子・今村紫紅に大きな影響を受けていました。紫紅は群青などを用いた鮮やかな色彩による作品を発表していました。御舟も絵具と色彩への強いこだわりをみせ、のちに自らが「中毒」になったと語るほど、最初は黄土、次に群青を多用しました。
大正時代後期に入ると、御舟は徹底した写実に向かい、細密描写を追求していきます。日本画の画材を用いて油彩画的な質感描写を追求した試みは、北方ルネサンス絵画や同時代の洋画家・岸田劉生の作風を意識したもので、さらに中国・宋代の院体花鳥画の影響を受け、それまでの日本画にはほとんどみられないような、ものの質感表現による静物画・花鳥画を生み出しました。
徹底した写実を突き詰めたのち、御舟の関心は日本・東洋の古典的な様式や技法へと向かいます。《炎舞》【重要文化財】(No.10)では、炎の観察と蛾の写生に基づく入念な描写とともに、仏画や絵巻の伝統的な表現を取り入れ、リアルであると同時に神秘性、象徴性をも備えた作品を生み出しました。また、昭和初期には、琳派の画面構成や装飾性を志向するとともに、独自の超絶技巧を編み出しました。《翠苔緑芝》(No.16)や《名樹散椿》【重要文化財】(No.19)はその代表的な作例です。
御舟は1930(昭和5)年に渡欧、各国を歴訪して西洋美術の名品に接し、さらに新たな様式を模索していきます。特に晩年の花鳥画では、紙と墨という画材の性質を活かしたさまざまな試みを行い、技法的な成熟をみせています。
本章では、さらなる高みへと常に挑戦し続けた御舟の軌跡をご紹介します。また、画家自身の制作に対する言葉、弟子・吉田善彦による作品解説や御舟の独創的な表現を再現した現代の日本画家による技法のサンプルも、併せてご覧いただきます。


No. 1 《瘤取之巻》

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速水御舟《瘤取之巻》(こぶとりのまき)
1911(明治44)年 紙本・墨画・巻子(1巻) 
17.5×431.6㎝
山種美術館

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《瘤取之巻》(部分)


黒夕日ケ岡の赤曜会展覧会会場にて 右から幸三郎、紫紅、御舟、青樹、大月 1915(大正4)年_S

目黒夕日が岡の赤曜会展覧会会場にて 1915(大正4)年 右から吉田幸三郎、今村紫紅、御舟、小茂田青樹、小山大月
『新美術館開館記念特別展 速水御舟 ―日本画への挑戦―』(山種美術館 2009年10月)より転載


No. 2 《錦木》

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速水御舟《錦木》(にしきぎ)
1913(大正2)年 絹本・彩色・軸(1幅) 142.2×70.6㎝
山種美術館

[師・速水御舟の作品について -吉田善彦のことば-]
「浦津」「瘤取の巻」「雨雲」などは楓湖塾の歴史画、大和絵の研究から出ていますが、「萌芽」「手向」「錦木」になるとかなり写生から入っています。しかし歴史画から入っていった人ですから、写実をつきつめた時代でもいやらしくならなかったように、すでにこの絵にも、人間的に温かい大らかな高いものが出ています。
***
速水先生は、胡粉(ごふん)の使い方のうまい人だったんですが、この人物の白の衣服なども、普通なら隈(くま)などを丹念にいれるところをはぶいて、中の説明は二の次にして情感がにじみでるような大きな構成をしています。それに対する三角型の帽子、錦木の角度等、鋭い感覚がうかがえます。
(『山種美術館所蔵 御舟作品集』 1983年5月)

002 A0355 速水御舟 錦木_部分

《錦木》(部分)


No. 3 《山科秋》

003 A0575oa 速水御舟 山科秋_R_S

速水御舟《山科秋》(やましなのあき)
1917(大正6)年 絹本・彩色・軸(1幅) 110.0×50.1㎝
山種美術館

[-速水御舟のことば-]
自分はひと頃黄土(おうど)を好んで凡(すべ)てを黄土を使って描いた。黄土が無くては絵が描けぬ様にさえなった。所謂(いわゆる)黄土中毒である。これは不可(いか)ぬと思った。それで全然黄土なしに描くことにした。次には群青(ぐんじょう)中毒者になった。然(しか)しそれも何(ど)うやら征服し得る様になった。思うに自分は絵其物(そのもの)よりも色にとらわれて居たのである。とらわれから脱して漸(ようや)く自分の仕事の基礎が出来て来た。
すぐに真実はとらえられるものではない。真実は変化性を持つ。どれが真実であるとは寔(まこと)は云い切れない。もっとその奥に深い真実がひそんでいる事を思わなければならない。
(1933年4月1日 自宅に於て開催された第18回研究会に於ける講話記録)
(「真実に就て」『速水御舟(1)』学習研究社 1992年6月)

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1966(昭和41)年、日本初の日本画専門の美術館として開館。 2009(平成21)年、渋谷区広尾に移転、新美術館としてオープンしました。 創立者・山﨑種二の「美術を通じて社会、特に文化のために貢献する」という理念を受け継ぎ日本画の魅力を発信する美術館です。